地方の建設コンサルタントがトレンドを追う必要性

建設業界のトレンド



どの業界でもトレンド、いわゆる流行があるだろう。
建設コンサルタントが大きくかかわる建設業界にもトレンドがやはりある。

ドローンはもはや当たり前になりつつあり、i-Construction、BIM/CIM、点群データ、AIなど、その流行の内容やスピードはすさまじいものがある。

今回は、このようなトレンドに地方の建設コンサルタントはついていくべきかについて論じていこう。


建設業界のトレンドはどこから発生するのか



そもそもトレンドはどこから発生するのだろうか。

なにもトレンドは勝手に発生するわけではない。
建設業界におけるトレンドの震源地は往々にして国、国土交通省だ。

国土交通省では、国の要請や社会情勢を反映した上で将来的なビジョンを掲げており、このビジョンを提言やガイドラインの整備によって具体化している。

一例として、i-constructionが挙げられる。
これは、少子高齢化、若年者の労働人口の減少、老年者の技術の継承の困難、人手不足という社会情勢が建設業界に与える負のインパクトが大きいため、最新技術を導入して工事を効率化し、生産性を上げることを目的としている。

困っていること、解決すべき課題について、国も黙ってみているわけにはいかない。
そのため、国土交通省を中心に施策を打ち出しているのだ。

一方、これらの提言やガイドラインは、使わなければ絵に描いた餅で何も起きない。
また、浸透させなければ当然ビジョンは流通せず、トレンドにもならない。

ビジョンを浸透させ、トレンドを作るにはどうするか。
国土交通省は、自分たちの発注する業務にこれらの提言やガイドラインを導入し、厳守させるようにする。
この割合を年々増加させることで、徐々に提言やガイドラインが受注者側に認知されていくことなる。

国土交通省の提言やガイドラインが整備された直後は、都道府県や市町村自治体は基本静観している。
何故なら、その提言やガイドラインがどれだけの本気度か分からないからだ。

国土交通省の業務内容が段々とその割合を増していき、一定の規模や浸透率になると、都道府県でもその本気度を鑑み、独自でトレンドに対するガイドラインを制定する。

市町村自治体も都道府県に追随する形で独自にガイドラインを制定するか、県のガイドラインに準じた形で運用することになる。

市町村自治体までトレンドが行き渡るということは、市町村自治体を相手にしている地方の建設コンサルタントにトレンドが波及してくるともいえる。


簡単に上記の話をまとめると以下の通り。

国土交通省があるトレンドを広めるために、提言やガイドラインを整備、業務発注

都道府県が本気度を見極め、追随

市町村自治体も追随


ここで重要な視点は、国土交通省が広めようとしているトレンドを受けた業務を発注しているわけだが、この業務の受注者は大手の建設コンサルタントということだ。

国土交通省が望むトレンドを実現するには、高い技術力、技術者の多さ、そのトレンドに対する研究開発力、またこれらを実現するための資本力など、企業規模が大きいほどその可能性は高まる。

言い換えるならば、国土交通省はトレンドを広めようとしている一方、大手の建設コンサルタントも同様にトレンドを広める立場にいる、と言える。

一方、地方の建設コンサルタントは、都道府県ないしは市町村自治体が主に発注者となるため、ある程度建設業界にトレンドが浸透した状態での業務の受注となる。
そのため、地方の建設コンサルタントは、トレンドを広めるというよりも、トレンドを追う側にいるといえる。

大手の建設コンサルタントはトレンド(波)を作る。
地方の建設コンサルタントはトレンド(波)を追う。

そんな大きな差異がある。


地方の建設コンサルタントはトレンドを追うべきか



トレンドが行き渡る過程を記したが、改めて確認すると、今回の問いは
「地方の建設コンサルタントはトレンドを追うべきか」だ。

上記で書いた通り、地方の建設コンサルタントは、基本的にトレンドを追う立場にある。

トレンドなんて追わなくても、もちろん生きていける。
なんせ、国土交通省から都道府県、都道府県から市町村自治体までにトレンドが浸透するのはかなり時間がかかる。
加えて市町村自治体が決断しなければ、従来通りの業務に終始するものだし、なにより新しいことを導入することは結構大変だ。

それでも僕の意見は、地方の建設コンサルタントでもトレンドは追うべき、だ。

理由は以下の2つによる。

①自治体の印象向上
②自身の市場価値の相対的な向上


それぞれ解説していこう。

①自治体の印象向上

都道府県ないしは市町村自治体がいざトレンドに乗ろうとしても、かなりハードルが高い。
いくら国土交通省が提言やガイドラインを整備しているとはいえ、単純に新しいことにチャレンジすることは、体制作りに始まり、設備投資、教育などの研修等、時間、人的資源、資金の観点から大きなエネルギーが必要となる。

この時、地方の建設コンサルタントが国土交通省のトレンドをすでに知っており、試行錯誤済みだとしたらどうだろうか。

都道府県および市町村自治体からアーリーアダプターとして認識され、トレンドを導入するに当たり必要な知見やノウハウについて相談される機会が増え、一目置かれる存在に会社がなれる。

直ぐには難しいかもしれないが、先駆的な取り組みを実施していることで、都道府県や市町村自治体に対し安心感を与え、結果的にトレンドに関わる業務の受注もありうる。

地方の建設コンサルタントがトレンドを追うことで、都道府県や市町村自治体から頼られる余地が生まれることは、会社としては大きなメリットだろう。


②自身の市場価値の相対的な向上

自治体の印象向上が会社側のメリットとすれば、個人にとってもメリットがある。

それは、トレンドを知っている、実践している、使いこなせることで、自身の市場価値が向上するということだ。

大手の建設コンサルタントでも地方の建設コンサルタントでも、みんながトレンドを理解した状態では差が出づらい。
むしろこの場合、本当の実力はどうかは別として、ハロー効果により大手の建設コンサルタントが高く評価されがちだ。

そのため、地方の建設コンサルタントがトレンドに追随し、むしろ駆使する立場に立つことで、ひとつの武器を所有することができ、市場においてもトレンドに乗っていない、つまづいている人たちから一歩飛び抜け、相対的に高い市場価値を有する人材として評価を受けることが可能になる。

個人についても、トレンドを追うことでのメリットがあるのだ。


まとめ:トレンドにより人材が二極化する



以上、地方の建設コンサルタントがトレンドを追うことの必要について論じた。

トレンドを必ずしも追う必要はないかもしれない。
地方でまったり測量や設計ができれば良いと言う思想も理解できる。
そのような選択もあってしかるべきだと僕は思う。

とある研修で講師が話していた言葉が今でも印象に残っている。
「現状維持は未来への衰退であり、現状に対して足掻くからこそ、未来でなんとか現状維持ができる」

僕はどんな状況でもこの言葉は当てはまると考える。
現状はいつまでもそのままではなく、トレンドの影響を受けて常に変化していくものだ。
だから、いつまでも現在が続くことはあり得ない。

そのため、トレンドによって、現状維持を望む人材とトレンドに追随する人材との間には、どんどん溝が出来、能力は二極化していくだろう。

何れの立場に立つか。
誰もが一度問いかけたい良い問いだと、僕は思う。

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