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地方の建設コンサルタントと災害復旧事業(災害査定)との関係 その1(概要編)

地方の建設コンサルタントと災害復旧 災害復旧。 あなたはこの言葉を聞いたことがあるだろうか。 簡単にいうと、自然災害が原因の施設被害の復旧を指す。 この災害復旧、結構大変な業務にも関わらず共有されづらい。 今回は災害復旧について解説していこう。 災害復旧とは? 災害復旧とは、自然災害により被災した公共土木施設の迅速な復旧を支援する事業 だ。 正式には災害復旧事業というが、一般に災害復旧と呼ばれるため、当該投稿では災害復旧と呼称する。 台風や地震等の自然災害により、道路や下水道、ため池、河川等が崩壊した場合、そのまま放っておくことは住民の安全を棄損することになるため、迅速な対応が求められる。 この時、機動的な予算を提供し、迅速な公共土木施設の復旧を目的とする事業が災害復旧だ。 災害復旧における予算は、公共土木施設災害復旧事業費国庫負担法に基づき、被災した施設を復旧するために必要な予算が国から出る性質を持つ。 つまり、 自治体が復旧にかかる費用負担をせず、国の予算で対応することが出来る事業 と言える。 より詳細な内容は以下のリンクを確認してほしい。 http://www.mlit.go.jp/river/bousai/hukkyu/pdf/00-index-saigaihukkyu-gaiyo.pdf 災害復旧の大まかな流れ 以下は大まかな災害復旧の流れだ。 ①自然災害等による公共土木施設の被災 ↓ ②都道府県や市町村自治体の災害復旧の国への申請 ↓ ③公共土木施設の被災の確認、申請の妥当性の確認(査定) ↓ ④承認・非承認(朱入れ) ↓ ⑤事業開始 最も重要なポイントは、④の朱入れ(=GOサイン、お墨付き) だ。 何故なら、どんなに大規模で致命的な被災をしていても、その 内容が妥当ではない場合、申請は棄却され、災害復旧の事業が遂行できなくなる からだ。 更に、申請が棄却された場合、対象の公共土木施設の災害復旧が出来なくなる。 そのため、都道府県や市町村自治体は是が非でも朱入れをもらうために奔走することになる。 また、③の査定においては、現場に国土交通省から査定官、財務省から立会官が一名ずつやってくる。 査定官は技術面で、立会官は金額の

地方の建設コンサルタントがトレンドを追う際に有効な図書

建設業界のトレンドを追うためには 建設業界の進展は目覚ましく、トレンドが常に流動的であり、加速している。 そのためトレンドを追うためにはがむしゃらに業務に従事するだけでは難しい。 今回はトレンド追うことが出来る図書について解説する。 トレンドってどうやって追うべきか トレンドを追う方法としては、t例えば以下が想定される。 講演会 講習会 現場見学 図書 このうち、僕がお勧めしたいのは 図書 だ。 なぜなら、講演会や講習会、現場見学は、従事している都道府県によってその機会は不均一だからだ。 また、リピートして聞くこともなかなか難しく、振り返りがしづらい。 図書の場合、これらの課題を克服することが出来る。 機会の観点で言えば、あなたが望めばその情報はすぐに手に入る。 大型書店が近くになくとも、Amazonで注文すれば1~2日であなたの手元に届く。 また、図書は媒体として手元に残るため、振り返りや共有が図りやすい、都合のいいツールとして機能する。 トレンドを追う方法としては、図書は非常に優秀だ。 どの図書がいいのか 具体的にトレンドを追うための図書をここで紹介していこう。 僕が知りうる範囲で重要である図書(ともすれば業界では当たり前)である。 国土交通白書 国土交通省から発刊されている図書。 白書は各省庁がまとめた省庁の取り組みや今後の展望をまとめた図書であり、国土交通省からも発行されている。 トレンドの震源地である国土交通省から発行されている図書なので、いわばトレンドの塊と言える。 技術士の試験ではこの図書から出題させると言っても過言ではないため技術士二次試験を受ける人はもちろん、業界上流の大きな流れを知るにうってつけの図書だろう。 国の人口や経済の現状や将来予測、働き方など切り口から基礎的な情報を獲得できるほか、国土交通省の施策について詳細にまとめられている。 図書もあるがインターネットでも閲覧可能。 http://www.mlit.go.jp/statistics/file000004.html 日経コンストラクション 隔週で発行されている雑誌。 毎回特集を組んでお

地方の建設コンサルタントがトレンドを追う必要性

建設業界のトレンド どの業界でもトレンド、いわゆる流行があるだろう。 建設コンサルタントが大きくかかわる建設業界にもトレンドがやはりある。 ドローンはもはや当たり前になりつつあり、i-Construction、BIM/CIM、点群データ、AIなど、その流行の内容やスピードはすさまじいものがある。 今回は、このようなトレンドに地方の建設コンサルタントはついていくべきかについて論じていこう。 建設業界のトレンドはどこから発生するのか そもそもトレンドはどこから発生するのだろうか。 なにもトレンドは勝手に発生するわけではない。 建設業界における トレンドの震源地 は往々にして国、 国土交通省 だ。 国土交通省では、国の要請や社会情勢を反映した上で将来的なビジョンを掲げており、このビジョンを提言やガイドラインの整備によって具体化している。 一例として、i-constructionが挙げられる。 これは、少子高齢化、若年者の労働人口の減少、老年者の技術の継承の困難、人手不足という社会情勢が建設業界に与える負のインパクトが大きいため、最新技術を導入して工事を効率化し、生産性を上げることを目的としている。 困っていること、解決すべき課題について、国も黙ってみているわけにはいかない。 そのため、国土交通省を中心に施策を打ち出しているのだ。 一方、これらの提言やガイドラインは、使わなければ絵に描いた餅で何も起きない。 また、浸透させなければ当然ビジョンは流通せず、トレンドにもならない。 ビジョンを浸透させ、トレンドを作るにはどうするか。 国土交通省は、 自分たちの発注する業務にこれらの提言やガイドラインを導入し、厳守させるようにする。 この割合を年々増加させることで、徐々に提言やガイドラインが受注者側に認知されていくことなる。 国土交通省の提言やガイドラインが整備された直後は、都道府県や市町村自治体は基本静観している。 何故なら、その 提言やガイドラインがどれだけの本気度か分からない からだ。 国土交通省の業務内容が段々とその割合を増していき、一定の規模や浸透率になると、都道府県でもその本気度を鑑み、独自でトレンドに対するガイドラインを制定する。 市町村自治体も都道府県に追随する形で独自にガイドラ

海外を志望する30前半の転職における6つの問いとエージェントの回答【建設コンサルタント】

建設コンサルタントの転職事情をエージェントに聞いてみた 社会人で働き始めると、自分のキャリアパスについて考える機会も増えるのではないだろうか。 その中の一つの手段としてあるのが「転職」だ。 とあるエージェントと話す機会を持てたので、その時に聞いた有益な情報を共有したい。 質問した6つの問いと回答 僕個人が気になっていることを中心に問いを事前に準備しておいた。 問1 建設コンサルタントの転職において、経験年数5,6年が市場で期待されていることは何か 問2 海外への建設コンサルタントの転職において、熱量が高い分野はあるか 問3 副業を許可している建設コンサルタント会社はあるか 問4 建設コンサルタントで一級建築士を持った場合の転職先の可能性は 問5 建設コンサルタントとして転職する際に、技術士以外で取得すべき資格はあるか 問6 若手でもマネジメント力を鍛えることはできるのか 僕の興味が前面に出ているので、興味がない問いは飛ばしてほしい。 以下にそれぞれの問に対するエージェントの回答を記そう。 問1 建設コンサルタントの転職において、経験年数5,6年が市場で期待されていることは何か 業界の経験があるだけで評価対象 となるため、これだけでも声がかかる余地がある。 何故なら、社内教育の手間がかからず、一定のノウハウや技術を持っており、会社側からみれば コストパフォーマンスが高い人材 と判断しているから。 経験年数が5,6年であればそれだけで市場価値がある 。 逆に言えば 経験年数が余りに短い場合難しい かもしれない。 若手はいつまでの期間を指すかというと明確にこれだ!というボーダーはないが、 一つの区切りとして35歳 が挙げられる。 35歳からは 会社側は管理・マネジメントという視点が評価対象として加わり始める ためだ。 問2 海外への建設コンサルタントの転職において、熱量が高い 分野はあるか 国外の社会資本整備で今動きが盛んなのは 鉄道 だ。 鉄道であれば海外への出張や駐在などもありうる。 問3 副業を許可している建設コンサルタント会社はあるか 今のところ聞いたことがない。 今後働き方改革が進めば副業を解禁する企業も出てくるだろう。 問4 建設コ

一級建築士の製図の学校を選ぶときの5つのポイント【資格】

一級建築士の製図試験対策=資格の学校 昨年度一級建築士一次試験に合格し、初めて二次試験を受験したが結果は不合格だった。 そのため、今年の受験に向けて改めて試験対策を構築している今日この頃。 今回は二次試験における製図試験に用いる資格学校について私見を語りたい。 一級建築士二次試験に合格していない身で語るのもおこがましいかもしれないが、同じ立場の方がいたらぜひ共有したい。 なお、前提として独学は自分には難しいと判断し、今回は講座利用、中でも資格の学校について語る。 製図の学校の占有率、合格率に意識を引っ張られないこと 製図の学校の二大巨頭は 日建学院 および 総合資格学院 だ。 それぞれ特徴があり、価格設定も違う。 毎年、これらの学校から講座受講者の合格率や占有率が発表され、実績としてHPやチラシに誇大に掲載されている。 が、これらは正直に捉える必要はないと僕は考える。 それは以下の通り。 ①いずれの学校の 教材は基本的によく作り込まれている ため、合格する者はいずれを選択してもあまり関係ない ②合格率および占有率は出席率や模擬の結果などにより 数値の調整 が図られているため、錯覚しやすい 僕は二級建築士製図試験講座は総合資格学院、昨年度の一級建築士製図試験講座では日建学院を使用したため、上記は比較した目線での意見となる。 では、何をもって判断するとよいだろうか。 講座を実際に受けることを想定した視点で判断する この投稿ではどちらの学校をお勧めすることはしない。 どちらの学校も特徴があり、見方や考え方で選択が人によって異なるからだ。 ここでは選択するための判定材料となるポイントを提示したい。 その材料は大きく5つだ。 上から順に重要度が高いと考えて貰えるとよい。 ①~③は特に重要(MUST)で、④、⑤は推奨(BETTER)の位置づけだ。 ①講師によるエスキス・記述チェックの頻度 ②他の受講生の図面を見る機会 ③講座受講人数 ④教室開放日と自分のスケジュールの合致 ⑤通学時間および距離 以下にそれぞれ説明していこう。 ①講師のよるエスキス・記述チェックの頻度 この要素は最も大きい。 他の何よりも重要だ。 何故なら、 自分で描いたエスキスや図面、記述

建設コンサルタントに向いている性格や能力はあるのか【地方の建設コンサルタント】

建設コンサルタントに適性がある性格や能力とは 学生からよく聞かれるシリーズのひとつに、どんな性格の人が向いているか、どんな能力を持っていると有利か、という質問がある。 今回は建設コンサルタントで求められる性格や能力について論じていこう。 性格と能力は実際には区分されるが、一体で説明する方が容易なため、今回は性格と能力をごちゃまぜで説明するが、ご容赦いただきたい。 目指す企業規模で大きく分かれる 結論的には、 あなたが目指す企業規模によって求められる性格や能力は変化する、 と僕は考えている。 具体的に言えば、 大手の建設コンサルタント 地方の建設コンサルタント に分けられる。 これは、業務の住み分けが成されていることに起因する。 住み分けについては以前の投稿を参照してほしい。 大手の建設コンサルタント=0→1にする馬力 僕は大手の建設コンサルタントでの就労経験がないため、責任を持った伝え方が出来ない。 しかし、周りの上司は大手の建設コンサルタントから転職してきた方が多く、彼らの話や行動などから推測するに、以下の能力が求められると思われる。 課題解決力 企画力 プレゼン力 ちょっと視点を変えてみよう。 何故国や県、海外政府は大手の建設コンサルタントに業務を発注するのだろうか。 それは、大手の建設コンサルタントなら国や県で困っている 高い難易度の業務を遂行できることを期待している からだ。 ここでいう難易度が高いとは、従来の技術をただ使うだけでは達成できず、応用や他分野の視点、国や世界のトレンドなどを含めている。 極端な言い方をすると、 0から1に持っていける馬力があるのが大手の建設コンサルタントの特徴 といえる。 そのための馬力を生む能力が上記で挙げた、 課題解決力 企画力 プレゼン力 が重要となる。 この特徴を、平易な言葉にブレイクダウンしていくなら、 状況分析が得意 (ミーティングなどで誰が今何を欲しているか推測できる) 好きなアーティストやモノを紹介するのが上手 (自分が紹介したその商品を相手が買ってしまう) 一からイベントを企画するのが好き (飲み会やイベント企画を率先し

残業は害悪なのか?【地方の建設コンサルタント】

残業と切り離せない建設業界 建設業界と残業時間は切っても切り離せない関係にある。 そして、建設コンサルタントもその範疇に入る。 働き方改革が叫ばれて久しく、建設業界でも現場では週休二日制、ノー残業デーの推進など様々な施策が打ち出されている。 さて、残業とは果たして悪なのだろうか。 この投稿では残業について綴っていこう。 健康を害する残業は絶対NG 大前提として、過労死ラインと言われる 80時間を超えるような残業はもちろん問題 だ。 休日を死守する場合、通常の就業時間に加え4時間残業することになる。 過労ラインまでいかなくとも残業60時間の場合、休日を確保するならざっくり平日3時間の残業を行うことになり、基本的な就業時間である8時間に加えると11時間にもなる。 このほか、通勤や出勤の準備等を加えるとあっという間に半日以上会社に時間を費やすことになる。 一日の半分以上が仕事で埋まるのは、自分の余暇や勉強の時間を確保できない意味でストレスフルであり、精神を疲弊する原因となる。 改めて言うまでもなく、健全な仕事をするには、健全な肉体と精神が必須であり、純粋に長時間の労働は健全性を蝕んでいく。 ひとが人並みの生活をするためには、健康と引き換えに残業をしてはいけない。 残業には良い・悪いに分けられる とはいえ、僕としては「すべての残業が悪だ!」を切り捨てるつもりもない。 例えば、以下のような状態であれば、時間がもっとほしいと思うのではないだろうか。 自己の成長につながると自覚している業務 自主的にやりたいと選択した業務 ポイントは、 自己のためになると納得しているか だ。 例えば、僕は学生まではよくTVゲームをやっていたが、ハマると時間を忘れてどんどんのめり込んでいってしまう。ゲームをやりながら寝落ちしていたなんてよくあった。 その感覚と一緒で、自分が興味を持っていたり、やりたいと考えていた業務に従事することになれば、時間がかかっても楽しくできるのではないだろうか。 僕は、これを良い残業と呼びたい。 肉体、精神を摩耗する残業=悪い残業 一方、こんな残業はとてもではないが楽しくは出来ないだろう。 納期に追われ、常に考える余裕がない業務 膨大な量の業務を自分だけで